中武シェフを訪ねて三重県のヴィソンへ。そこは、食を楽しむテーマパークでした。
広大な敷地の中にあるモダンな施設たち。中には全国的にファンが多いコンセプチュアルなショップが入ります。ここは三重県多気町を一気に有名にした美しい村=VISON(ヴィソン)です。さまざまなエリアを行くうちに気づいたのは、「何を食べようか」「どこでお茶しようか」といった食の目線でとらえること。目的の食を目指してエリアを廻れば、よりヴィソンを楽しめます。
ズドンと心と胃袋をつかまれる体験を
中武シェフにお会いするまで施設を歩いてみました。「マルシェ」には丹精込めて育てられた野菜や果物をはじめ、松阪牛などの精肉店もありました。編集部の胃袋がつかまれたのは一口の試食「もち鮪」です。まさにモチっとして旨味が舌からのどへと広がります。撮影部のズドン体験はサンセバスチャン通りのバスクチーズタルト。美味しそうに食べていました。ちなみにこのタルトの監修は中武シェフ。まだ会っていないのに美味しい借りが一つできた気分でした。
マルシェ ヴィソン
三重とその周辺でとれた山の幸・海の幸の産直市場。松阪牛をはじめ、新鮮な野菜や果物、海女さんが営む「海女小屋 なか川」、もちっとした食感のもち鮪を扱う「𦚰口の鮪」、深海魚が食べられる「第十八甚昇丸」が揃います。
スウィーツ ヴィレッジ
日本を代表するパティシエ・ショコラティエ辻口博啓(つじぐちひろのぶ)氏がプロデュースしたエリア。ヴィソン限定品もあるので記念にどうぞ。朝食で提供しているフレンチトーストが人気です。
和ヴィソン
和食文化を支える調味料の世界を旅しましょう。昆布の老舗「奥井海生堂」、お味噌の専門店「蔵乃屋」、お酢作りを見られる「MIKURA Vinegary」などがあります。近くには鮨、天ぷら、うなぎなどの日本料理のレストランも充実しています。
日本で二番目にバスクに近い場所
山の頂上にあるホテルのエントランスを進むと「IZURUN(イスルン)」です。中武シェフは素敵な笑顔で編集部を迎えてくれました。「バスク料理が好き」を超えて「バスクの土地、人」が好きだという中武シェフ。日本で初めてバスク料理を広めた深谷シェフに敬意を払い、イスルンは日本で二番目にバスクに近いレストランだと話します。(詳しくは次号を!)
海女さんの目に映る海底を箱に詰め込む
鮑とサザエをバスクの知恵で仕上げた逸品がコース料理の人気メニュー「海女さん」です。「男子禁制だけど僕が海女になったイメージでつくりました」。頭の中では大冒険をして鮑やサザエを見つけたのでしょう。サザエには伊勢志摩の海藻を練り込んだバターを。サザエと一緒に食べると磯の香りが広がります。鮑は渡り蟹を挟んでおり、口に入れると伊勢志摩の旨味がしみ渡ります。お料理はもちろんシェフの話もデリシャスでした。ご馳走さまです。
IZURUN[イスルン]料理長
中武 亮(なかたけあきら)
82年広島県生まれ。大阪辻学園調理師専門学校卒業後、函館の「バスク」にて深谷宏冶氏に師事。 2010年にスペイン政府貿易庁主催の第3回「ICEX(シェフ養成プログラム世界選抜20名)」の日本代表としてスペインに国費留学。その際「アケラレ」「アルサック」で3年間働く。帰国後は東京・麻布「山田チカラ」で茶懐石とスペインのガストロノミーを学び、その後、素粋居(そすいきょ)にて手島竜司氏と「ヒノモリ」を開業。2021年7月より現職。