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Lesson#2 紫外線ケア
125号から始まった「学び直しの美容学」。美容の知識や日常のお手入れ方法について、知っているつもりでも実はよく分からないことがあったり、なんとなく自己流でやりすぎたせいで正解が分からなくなっていたりしませんか?
せっかく時間をかけて美容に取り組んでいても、それが間違った知識や方法だともったいない! 今回はこれからの時期、特に重要な「紫外線ケア」のことを、正しく一緒に学び直しましょう。
原みずき
皮膚科医。都内のクリニックで勤務。自身が小児期にアトピーであったことから皮膚科医を目指した。女性の皮膚科専門医としてアトピーなどの日常的な疾患から、シミなどの美容皮膚科まで幅広く診療している。
1限目 – 紫外線の基礎知識
まずは紫外線について理解を深めましょう。
紫外線の肌への影響
太陽から地表に届く紫外線には、UVAとUVBの2種類があります。
UVA
地表に注ぐ紫外線の大半を占める。波長が長く、雲やガラスなどの物質を透過しやすいため、肌の深部(真皮の部分)にまで届く。
UVB
ほとんどはオゾン層などで吸収されるが一部は地表まで到達。波長は短いが、肌の表皮には届く。日焼けを起こす力はUVAの600-1000倍強いといわれる。
紫外線の強さ
紫外線の強さは、地球をとりまくオゾンの量、気象条件、時間帯などによって変わります。同じ気象条件では、太陽が高くなるほど紫外線も強くなります。日本では6〜8月の正午ごろ、紫外線が最強レベルに。そして標高が上がり空気が薄くなると、紫外線もさらに強くなります。また紫外線の量は、強さ×時間で算出します。
私たちが浴びる紫外線は、太陽から直接注がれるもの(直達光)だけでなく、空気中で散乱して届くもの(散乱光)や、地面等で反射して届くもの(反射光)があります。砂や雪は紫外線を強く反射してしまうため、海水浴やスキーに出かける際にはより強い日焼けに対する注意が必要です。
(環境省「紫外線環境保健マニュアル2020」より)
2限目 – 紫外線ケアのポイント
ポイントをおさえて効率的に対策をしましょう。
紫外線ケアの前に、紫外線によって、しみやしわが生まれてしまう背景をご説明します。
紫外線とメラニン
人間の体には元々、紫外線から肌を守る仕組みが備わっています。それが「メラニン」と呼ばれる色素で、「メラノサイト」という細胞からつくられます。本来「メラニン」は有害な紫外線から細胞核を守ってくれる肌の味方。ですが紫外線を浴びると「メラノサイト」が暴走。「メラニン」が大量につくられてしまいます。さらに加齢などにより肌の新陳代謝が滞ると、つくりだされた「メラニン」が排出されず、色素が肌に溜まってしまう結果に。これが肌の黒ずみやしみ・そばかすの原因です。
実は怖い、光老化
光老化とは、加齢による老化とは異なる、慢性の紫外線障害のこと。紫外線を長期間、無防備に浴び続けると起こるものです。例えば太ももの内側などふだん日に当たることが少ない肌に比べ、ふだん露出することが多い手の甲などの方が硬く、しわやたるみが多いと感じませんか。これは紫外線によって、肌の真皮の部分で、張りや弾力を保つ役割を持つコラーゲンやエスラチンが変性してしまった結果。光老化は加齢による老化に上乗せの形で起こるため、毎日の予防が大切です。
紫外線を防ぐには
紫外線を浴びると体内では、私たちが生きていく上で欠かせないビタミンDが生成されます。そのため適度な日光浴は必要ですが、美容のためにはしっかりしたケアも必須。6つのポイントをおさえて対策をするようにしましょう。
紫外線の強い時間帯を避ける
気象庁のHPに掲載されている紫外線予測分布図のほか、UV指数が分かるアプリなどを活用するのも◎。
日陰を利用する
直射日光が当たらない日陰にいても散乱光や反射光があるので、必要に応じて対策を忘れずに。
日傘を使う、帽子をかぶる
最近では紫外線防御機能を高めた日傘が多く販売されています。帽子はつばが広いタイプがより効果的。上手に活用しましょう。
衣服などで肌を覆う
袖や襟があるタイプの方が効果的。またしっかりした生地感で色調が濃いものの方が、紫外線の透過率が低くなります。
サングラスをかける
肌と同じく、目に対しても紫外線ケアは必要です。UVカット表示があるものを選びましょう。また正面以外から照射する紫外線を防ぐためには、できるだけ顔にフィットしたものを着用するのがポイントです。
日焼け止めを上手に使う
衣服などで覆うことのできない部分を紫外線から守るには、日焼け止めが有効です。次の項目から詳しく学びましょう。
もしも日焼けをしてしまったら?
日焼けは医学的には日光皮膚炎といいます。紫外線にあたり数時間後から皮膚が赤くなるサンバーン(炎症反応)と、数日後に肌が黒くなるサンタン(色素沈着反応)とがあります。
日焼けは肌がやけどをしてしまった状態です。やけどの応急処置同様、できるだけ早い段階で患部を冷やすことが大切。流水や氷のうなどを使って肌を冷やしてあげてください。
また日焼けした肌は乾燥し、バリア機能が低下しています。デリケートになっているため、できるだけ刺激の少ない化粧水などで保湿をしましょう。
もし炎症がひどい場合や、水ぶくれなどができてしまった場合は、自己判断せず早めに皮膚科を受診してください。
3限目 – 紫外線ケア実践法
日焼け止めを使い、上手にケアしましょう。
日焼け止めの選び方
日焼け止め商品には、紫外線をどの程度防げるかがSPFやPAといった値で表示されています。いずれも数値が高いほど効果も高くなります。使うシーンに合わせて選びましょう。ただしこの数値は、推奨量の日焼け止めが肌にムラなく塗られていることが前提。実際には汗や摩擦などで日焼け止めが落ちてしまう場合が多いので、あくまでも目安程度に考えておくほうがベターです。
また紫外線を防ぐ成分には、紫外線吸収剤と紫外線散乱剤とがあります。塗った際に肌が白く見えないのは紫外線吸収剤ですが、まれにアレルギー反応が出る場合も。肌が敏感な方は紫外線散乱剤のみが配合されている商品を選びましょう。
日焼け止めの塗り方
日焼け止めには数種類の形状があります。粘度が高く肌に密着しやすいクリーム状のものは顔用、塗りやすいジェルタイプは体用、使用感が軽めのスプレータイプはお子さま用などと、用途や好みに合わせて使い分けるといいでしょう。
商品には使用方法が記載されていますので、表示をよく確かめてから使用してください。ここでは基本的な塗り方をご紹介します。