春からスタート!学びなおしの美容学

Lesson#3 アンチエイジング

美容の知識を基礎から学び直すシリーズ。今回のテーマはアンチエイジングです。

原みずき

皮膚科医。都内のクリニックで勤務。自身が小児期にアトピーであったことから皮膚科医を目指した。女性の皮膚科専門医としてアトピーなどの日常的な疾患から、シミなどの美容皮膚科まで幅広く診療している。

アンチエイジングってそもそも何?

アンチエイジングは英語で、アンチが対抗・反対、エイジングが年をとること・老化の意味。日本語では「抗老化」「抗加齢」などと訳されます。現実には老化や加齢を止めることは不可能なので、「老化を予防して若々しさを保つ」というニュアンスで使われます。

美容の世界では、年齢と共に気になり始める肌のシワ・しみなどをできるだけ目立たなくし、若々しい見た目を維持できるようお手入れに取り組むことを『エイジングケア』と呼んだりします。

近年、アンチエイジングは健康・医療の分野でも注目の的。生活習慣病などのリスクを減らし、健康長寿をめざす「アンチエイジング(抗加齢)医学」が提唱され、未来志向型の予防医学として研究が進められています。

広義な関わりを持つアンチエイジングですが、ここでは主に美容・美肌づくりの観点から傾向と対策を学びましょう。

【アンチエイジングの傾向】老化の原因と仕組みを知る

肌の老化を招く5つの要因

肌が老化する原因はいくつかあり、それらが複合的に絡んでいる場合がありますが、ここでは代表的なものをご紹介します。

紫外線

紫外線を浴び肌に炎症が起きると、メラノサイトが活性化。メラニン色素が大量につくられてしまい、しみやそばかすの原因となります。また肌の真皮層にまで紫外線が届くと、肌の弾力を保つコラーゲンやエラスチンが破壊され、シワ・たるみの原因に。

代謝の低下

代謝とは、食べ物からとった栄養を、臓器を動かすエネルギーにしたり、筋肉や血液につくりかえたり、不要になったものを排泄したりするプロセスのこと。この代謝が衰えると、酸素不足や血流低下が起こり、肌のターンオーバー(お肌の生まれ変わり)のサイクルが乱れます。

乾燥

肌の新陳代謝が衰えると、角層で蓄えられる水分量が減り、肌が乾燥します。角層には、肌を保護する皮脂膜・潤いを蓄える天然保湿因子・水分保持機能を有する細胞間脂質が含まれており、これら3つのバリア機能の低下も乾燥につながります。

ホルモンバランスの変化

肌の潤いやツヤを保つ女性ホルモン「エストロゲン」は、年齢と共に減少します。また脳下垂体から分泌される「成長ホルモン」にも注意が必要。食事や睡眠の影響を受けやすく、不規則な生活で分泌のバランスが乱れると肌の代謝が衰え、老化が進行します。

活性酸素

老化や病気の大きな要因の一つ、活性酸素。免疫機能を持つことから人体に不可欠なものですが、増えすぎると正常な働きをする細胞まで酸化させてしまいます。活性酸素は呼吸のほか、紫外線・ストレス・喫煙・過度の飲酒などによっても発生します。

【アンチエイジングの対策】エイジングケアの方法を知る

エイジングケアの始めどきはいつ?

肌の状態や悩みは人それぞれですが、早くは20代後半から肌の衰えを感じ始める人がいます。40代・50代では、以前との変化が顕著に感じられ、本格的にエイジングケアを始める人が増えるようです。

いずれにしても「これまでよりも肌のハリや弾力が感じられない」「シワが増えたかも」など、ご自身が感じたら始めどきと考えてよいでしょう。

見逃しNGなエイジングサイン

肌に現れる老化の兆しのことをエイジングサインといいます。しみ・くすみ・シワ・たるみ・肌のしぼみなど、見た目に老けた印象を与えるものから、ざらつきやかさつき・化粧のりの悪さなど、感触から分かるものもあります。

放っておくとどんどん進行してしまうので、状況に合わせた対策を行いましょう。

ケアのポイント

ここからは、肌の状況に応じたエイジングケアのポイントを見ていきましょう。

しみ

多くの場合、紫外線が原因です。日頃から適切な紫外線対策を心がけましょう。スキンケアでは、メラニンの過剰生成を抑える美白成分が配合されたものや、ターンオーバーを整える角質ケア商品を選ぶのも◯。

シワ

シワ改善が認められたナイアシンアミドや純粋レチノールなどの成分を配合した薬用化粧品を使用することで対策が可能。また首のシワは、スマホの長時間使用など、下を向く姿勢を続けるとできやすくなるため、注意しましょう。

ハリ・弾力不足

肌の真皮層にあるコラーゲンやエラスチンの衰え・変質によって引き起こされます。糖化の影響もあるため、甘いものを食べすぎないようにするなど、食生活を見直してみるというのもよいかもしれません。

乾燥

保湿力の高い化粧品を使うだけでは乾燥は止められません。肌本来の保湿機能をしっかり働かせることを目的としましょう。また肌が乾燥している人の中には、水分摂取量が足りていない人も。水を適切に飲むなど、内側からの保水も考えて。

たるみ・ほうれい線

肌のハリ・弾力を保つケアのほか、表情筋を鍛えるという方法も。肌や筋肉の栄養素が足りていないと、やせ衰えて見えることもあるので、食事をバランスよくとるようにしましょう。

くすみ

血液やリンパの流れの悪化、ターンオーバーの低下が考えられます。マッサージや炭酸パックなども役立ちますが、循環をよくするためには、質のよい睡眠・食事・運動が大切です。

知っておきたい!アンチエイジング頻出ワード集

アンチエイジングと関連の深い単語はコチラ!

抗酸化物質

活性酸素の発生やその働きを抑制したり、活性酸素そのものを取り除いたりする物質のこと。ポリフェノールやカテロイドなどの種類がある。

糖化

血中に流れ出た余分な糖質が体内のたんぱく質と結びつき、細胞などを劣化させる現象。肌の糖化は、ハリや弾力の低下、シワ・くすみの原因となる。

AGEs(エイジズ)

終末糖化産物のこと。体内に蓄積された過剰な糖分とたんぱく質が結合したことによりつくられる。老化促進物質。

慢性炎症

免疫反応により生まれる炎症が体内でくすぶり続ける状態。自覚症状のないまま、さまざまな疾病の引き金となるため「サイレントキラー」とも呼ばれる。

若返りホルモン

成長ホルモンのこと。骨や筋肉を発達させる、代謝を活発にする、臓器を修復・再生するなど働きがある。

コエンザイムQ10

体内のエネルギーをつくるために必要となる補酵素の一つ。高い抗酸化力をもつことから、健康・美容向けの商品などに広く使われている。

アンチエイジング〇×テスト

アンチエイジングをもっと理解するために、ぜひやってみてください。

(Case1)紫外線は肌の大敵!太陽の光を極力浴びないよう、なるべく家の中で過ごすようにしています。

(Answer)×

【解説】紫外線が肌の老化を促進させてしまうことは事実ですが、紫外線には、カルシウムの代謝に必要なビタミンDを合成するという重要な役割もあります。また「幸せホルモン」とも呼ばれるセロトニンの生成にも関わってくるため、適度に日光を浴びることは決して悪いことではありません。日焼けをしないためのケアは施しながらも、ほどよく浴びて、健全な美をめざしましょう。

また肌に悪い影響を与える光は太陽光だけではありません。家の中で使うことが多いパソコンやスマホの画面から発せられるブルーライトも、肌の老化を加速させる要因の一つ。紫外線同様、長時間浴び続けないための工夫が必要です。

(Case2)肌にはビタミンCがよいと聞いたので、毎日摂るようにしています。

(Answer)○

【解説】ビタミンCには抗酸化作用があり、しみ防止や免疫力アップに役立ちます。また肌細胞をつくるコラーゲンの合成を促し、肌のハリを保つ手助けをしてくれることから、美肌づくりに欠かせない栄養素。

ただ一度にたくさんとっても十分に吸収されないため、毎日、しかもできれば毎食摂るのがおすすめです。

厚生労働省が定める成人の1日の推奨量は100ミリグラムですが、美容目的であれば3000〜4000ミリグラムが必要ともいわれます。サプリメントなどを上手に活用するとよいかもしれません。

(Case3)たるみが気になる私は美顔ローラーが手放せません。1日に何度も、手があく度に美顔ローラーを使い、こまめにケアしています。

(Answer)×

【解説】顔の引き締めや血流改善などの効果が期待される美顔ローラー。手軽に自分でマッサージができるのでとても便利ですが、やりすぎは禁物。顔の筋肉は非常に薄いため、過度な刺激を与えると筋肉が伸びきってしまう恐れがあります。また摩擦が色素沈着・コラーゲンやエラスチンの破壊につながることもあるため、使うのはほどほどにしておきましょう。

(Case4)コーヒーが大好きで、朝と昼の食後の一杯が欠かせません。毎日飲んでも大丈夫ですよね。

(Answer)○

【解説】コーヒーには、抗酸化作用のあるポリフェノールの一種「クロロゲン酸」が含まれています。「クロロゲン酸」には、血糖値の上昇や脂肪の蓄積を抑える働きがあるため、アンチエイジングにはぴったり。

またコーヒーに含まれるカフェインには、脂肪燃焼の効果も期待できます。ただし多量のカフェインを摂り続けると依存症になったり、鉄分の吸収が阻害されたりといったデメリットもあるため、1日3〜4杯程度にとどめておくのがベター。

(Case5)お手入れの方法をあれこれと変えるのは、肌によくないですよね。毎日決まったケアをずっと続けています。

(Answer)×

【解説】肌の状態は一年を通して大きく変化しています。季節ごとの紫外線量、温度、湿度などに合わせて、ケアの方法もなるべく変えるようにしましょう。

これからの夏は紫外線量が増え、温度・湿度共に高くなる時期。エアコンの使用による乾燥や血行不良の促進が懸念されます。日焼け対策をしっかりと行い、水分・脂分をバランスよく補う保湿を心がけましょう。

肌の夏疲れを防ぐにはビタミンAも有効です。レバーやウナギなどから摂取するのもおすすめです。

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