「冬うつ」を防ぐために知っておきたいこと
冬になるとどうも気持ちが落ち込みやる気が出ない…ということはありませんか?「冬うつ」は、ウインターブルーとも呼ばれる冬季うつ病のことで、「季節性情動障害」「季節性感情障害」ともいわれる、季節変化によって起きる季節性うつ病のひとつです。気温が下がり寒くなる冬にかけ症状があらわれ、春先になると自然に回復していくことが多いとされます。成人前後から徐々に発症し、男性よりも女性に多くみられるといわれます。一度発症すると毎年繰り返すことが多いともいわれるため、原因や特徴を理解して対処していきましょう。
迫 美樹 先生
東海大学附属医学部医学科卒業。卒業後は地元市中病院で研修をし、その後精神科の道へ。うつ病、統合失調症や児童精神の治療に携わりながらも、自身の3人の子育てを経験し、女性のメンタル面のケアに力を入れている。オンライン診療研修終了資格、予防医療検定、アロマテラピー一級を取得。
冬うつをチェック
冬も陽を浴びることが大切!
冬うつになる主な原因は、日照量不足であるといわれています。日照時間の短い地域ほど、冬季うつ病の発症率が高いことが知られています。一般的なうつ病と異なるのは、過食や眠気など、症状があらわれやすいことです。冬に備えて栄養を蓄えて寒い時期は静かに過ごす準備をするなど、もともとの人類の進化過程にあった冬眠習性の名残もあるのではとも考えられています。
冬うつかも?と自覚したら、日常でできる対処を
日照量不足により、必須アミノ酸のトリプトファンから生成される神経伝達物質「セロトニン」の合成速度が落ち、セロトニン神経機能が低下して、冬季うつ病を発症しやすくなります。セロトニンは目から入る光によって合成が促進されるので、できるだけ陽の出ている時間帯は、寒くても外出するようにしましょう(理想は30分〜1時間)。ウォーキングなど一定リズムで行う適度な有酸素運動は、セロトニンの分泌を促し、交感神経活性を抑え、副交感神経(回復や癒しに機能する神経)を優位にすることがわかっています。最低でも、朝起きたらカーテンを開け、太陽光をきちんと浴びてから1日を始める、規則正しい生活を送ることが望ましいです。また、栄養を考えた食事によるトリプトファン摂取が大切です。肉、魚、大豆などのたんぱく質にはセロトニンの生成に必要な必須アミノ酸のひとつであるトリプトファンが多く含まれているので、冬こそ意識的に摂りましょう。野菜や果物であれば、かぼちゃ、バナナもトリプトファンが多いのでおすすめです。トリプトファンを効率よく吸収するには糖分が必要なため、甘いものや炭水化物をたくさん食べたくなりますが、糖質の摂りすぎでも気分の低下や抑うつ症状をきたすこともあるため過剰摂取にならないよう気をつけましょう。